患者さんから「症状がなければ親知らずの抜歯をしなくてもいいと言われました」というフレーズを聞くことがあります。
もちろんケースによって様々ですがそれぞれのケースに対して患者さんが抜くリスク抜かないリスクを理解して決めているかが重要だと考えます。
抜くリスク・抜かないリスクを図*に挙げます。
症例ごとの図のようなリスクを患者さんに理解してもらって親知らずを抜くか抜かないかを決めてもらう必要があります。
今回は親知らずを抜かない場合のリスクを2つ説明します。
1つめは臨在歯の虫歯のリスクです。
症状がない親知らずを放置して隣の歯に大きな虫歯が出来てしまったケースのレントゲン画像を図@に示します。
いずれも症状がなく親知らずを抜歯せずに放置していたものです。親知らずが隣の歯に食い込んでいて黒くなっている部分が虫歯です。
もっと早く親知らずの抜歯をしていれば隣の歯は虫歯にならなかったかも知れません。
虫歯の大きさによっては隣の歯も抜歯になる可能性もあります。症状のない親知らずでも抜かないことでこのようなリスクがあることは理解してもらわないといけません。
2つめは要介護になってしまった場合のリスクです。
要介護になると通院が困難になり、訪問診療を受けるケースが多くなります。
通院が困難になると口腔内の清掃状態も悪くなり、それまで症状がなかったのに智歯周囲炎になることがあります。
通院困難になってから智歯周囲炎など親知らずの抜歯が必要な症状が出てしまったらどうすればいいでしょうか。
簡単な抜歯であれば訪問診療でも可能ですが、埋まっている親知らずの抜歯となると訪問診療の設備では困難になってきます。
設備的な問題以外にも全身疾患や年齢など様々な理由から困難です。その場合には頑張って病院の口腔外科まで行って抜歯をするか、対症療法的に抗菌薬で炎症を抑えるということになるでしょうか。
こうなってくると家族など周りの人を巻き込むことになり「こうなる前に親知らずを抜いておけば良かった」となるかも知れません。